那覇市首里にある「麺屋 拳玉 沖縄」。名古屋に本店を構えるこの店の一押しは塩ラーメン。極細麺に黄金色のこだわりのスープが絡みます。
実は、この店で働く店員は全員かつて依存症に悩んでいた人たちです。依存症患者の社会復帰を支援する団体「セレニティーパークジャパン沖縄」が依存症患者の「再生の場」になればとことし7月にオープンしました。
店を仕切るのは清水直人さん。清水さんもかつてギャンブル依存症に悩まされていました・・・。
清水さん「朝から晩まで、終わるまでずっとやっていました。休みの日は一日妻に嘘をついて、一日ですね、丸一日ギャンブルしていました。家族の状況は、もう自分の中では見えていなかった。自分だけしか見えていなかった。家族がどんなになろうと関係なかった」
「依存症ではないか」という妻からの言葉にも耳を貸さず、ギャンブル漬けの毎日。仕事もままならなくなり、ついには家族からも孤立していきました。
清水さんの妻「仕事に行っているってずっと思って生活していました。実際、離婚して新しい生活をしていく方がもしかしたら、自分にとってはいいのかもしれないと考えたこともありましたけれども、施設を勧めて、本人がダメだったら離婚しようという風に自分の中で決めたときがあって、本人に勧めたり、周りの方と相談し始めました」
依存症は「否認する病」だと言われています。「いつでもやめられる」「これを最後にしよう」そんな風に考えてしまうことこそ、依存症の症状だと言われています。
セレニティパークジャパン沖縄・位田忠臣代表「わたしは大丈夫って皆さん言います。全員の人たちが私は関係ないし大丈夫だと。それが依存症の中での否認というものになっている。嘘をついて依存行為を何かしようというのは、依存症の一歩始まりに繋がるのではと感じています」
店を運営するセレニティパークジャパン沖縄。ここでは現在およそ25人が回復に向けプログラムを続けています。
依存症患者の中には家族から孤立していく人が多いといいます。しかし依存症の知識を正しく学び、家族や周囲が共にに病気に向き合うことが不可欠だと代表の位田さんは訴えます。
位田さん「家族の理解は非常に助けになります。(依存症者の)人格を否定するのではなくて、病気がそうさせているっていうのを理解していただいて、家族全員で協力していくということ。どんな些細なことでも結構ですのでまずは相談をするということ」
清水さんもおよそ1年間、施設でのプログラムを続けてきました。プログラムを終えた今は、この店をきっかけに再び社会、そして家族と絆を強くしようと歩き始めました。
清水さん「今この目の前にある家族と一緒に過ごせることが一番だって。施設の中では思わなかったですけど、一緒に暮らした時に思いました」
清水さんの妻「自分を大切に、お互いを大切にしながら進んでいきたい」
この日、店内では落語の独演会が開かれました。この店のもう一つの役割は地域の人々との交流の場。イベントを通じてお店のこと、依存症のことを知ってもらいたい。そんな思いが込められています。
清水さん「依存症回復の施設の場として提供できて、さらにもっと飲食で広く幅広く展開できたらなと。依存症者の回復の道が広くできればと…」
回復の道を作る。依存症を回復した清水さんたちだからこそできる大きな挑戦が始まっています。